みなさんは、「きふ」という言葉に「寄付」と「寄附」の2つの漢字があることをご存知ですか?
先日、ふるさと納税について調べていました。
ふるさと納税といえば、自分のふるさとや応援したいと思った自治体に寄付をすると、その自治体からお礼の品が頂けたり、住民税や所得税から控除を受けられるなど、近年注目が集まっている制度ですよね。
そこである疑問が…。
総務省のふるさと納税のサイトの「寄付金」の表記が、すべて「寄附金」になっているのです。
一般的によく使う表記は「寄付金」だと思いますが、なぜここでは「寄附金」が使われているのでしょう。
そこで、「寄付」と「寄附」の違いについて、使い分け方があるのかなどについて調べてみました。
「寄付」と「寄附」が使われている例
まず、「寄付」と「寄附」がどんな風に使われているのか、いくつか例を見てみました。
先ほどのふるさと納税では、総務省のサイトや、「ふるさとチョイス」というサイトでは「寄附」の字が使われており、「さとふる」というサイトでは「寄付」の字が使われています。
国税庁のホームページでは「寄附金控除」となっていて、文書中の字も「寄附」になっています。
日本赤十字社や日本ユニセフ協会のホームページでは「寄付」の字になっています。
使用例からは、2つの字の使われ方に大きな違いはないように思われます。
「寄付」と「寄附」それぞれの意味は?
「寄付」と「寄附」に意味の違いはあるのでしょうか?
まず『広辞苑』を引いてみると、
「き-ふ【寄付・寄附】」
公共事業または社寺などに金銭・物品を贈ること。
(広辞苑第六版 iOSアプリ、株式会社計測技研)
という意味が載っています。
2つの字は同じ意味のものとされています。
次に『漢辞海』という漢和辞典を見ると、こちらも「【寄付・寄附】」と1つにまとめてあり、
①人に物をおくる。②身を寄せる。③金品を提供する
(漢辞海第三版 iOSアプリ、株式会社物書堂)
と、同じ意味を持つものとして扱われています。
では、「付」と「附」の漢字に意味の違いはあるのでしょうか?
同じ『漢辞海』によると、「付」という漢字の意味は
「①与える。さずける。②たのむ。託す。ゆだねる。③支払う。支出する。④近づく。くっつく。つ-く」。①と④については、「附」に通ずる
とあります。
「附」の意味は「①つ-く。つ-ける・ツ-ク。②与える。授ける。」となっており、どちらも「付」に通ずるとあります。
「付」の方が意味が多いですが、2つの漢字は意味が重なっているのですね。
「きふ」の「ふ」は、「与える、授ける」の意味なのでしょう。
辞書を見る限り、2つの言葉に意味の違いはなさそうです。
「寄付」と「寄附」の使い分け方は?
それでは、「寄付」と「寄附」の漢字はどのように使い分けたらよいのでしょうか?
正しい使い分け方ってあるのでしょうか?
調べていると、ネットにこのような記載のあるホームページがありました。
「(107)(正)寄付(きふ) /(正)寄附
(正)母校の図書館に自分の蔵書を寄附する。
(コメント:「(公共の事業・設備などのために)金品を贈ること」を意味する「きふ」は、「寄付」とも「寄附」とも書く。一般には「寄付」が多く、新聞表記も「寄付」である。しかし、法令・公用文における公式の表記は「寄附」である。なお、「付則・附則」「付属・附属」「付帯・附帯」「付置・附置」なども、法律では「附」の字を用いる。)」
(引用:南澤孝男『間違いやすい言葉の正誤判定』 1. 書き方に関する問題)
つまり、一般的には「寄付」の字を使うけれども、法律上の表記では「寄附」の字を使うということなんですね。
このホームページのコラムによると、著者の南澤さんはかつてある出版社の辞典の編集委員をされていた方ということなので、信頼できるお話だと思います。
(まさに「付属」と「附属」についてのコラムで仰っています。)
だから総務省や国税庁のホームページでは「寄附」の字が使われていたんですね。
それに対し、国の機関ではなく広く一般に寄付を求める日本赤十字社や日本ユニセフ協会では「寄付」の字を使っていたんですね。
「ふるさとチョイス」さんが「寄附」の字を使っているのは、国の公的な制度だから、ということなのでしょうか?
まとめ
以上の内容をまとめると、
・「寄付」と「寄附」に意味の上での違いはない。
・一般的に使われるのは「寄付」であるが、法律や公用文における公式の表記は「寄附」。
みなさんも、ふるさと納税や確定申告、お役所のホームページなどで「きふ」という字を見ることがあったら、注意して文字を確認してみると面白いですよ。
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